帰ってきたピンクドラゴン (その2)
…待てよ? 携帯を持つ暇も無かったってこと?サンマは火がついたままだったし…。
夕子は携帯を持っていないので、連絡のつけようがない。ってことはこちらが探してあげないと、もしかして帰ってこられなくなってる可能性があるってこと。単にあたしが嫌で帰ってこないのかも知れないけれど。
…その最悪の可能性だけは、回避したかった。っていうか今は考えたくないって方が正しい。
…今はただ、夕子の無事を祈るのみである。
そういえば、ひじきとか、サンマが出たってことは、今日は買い物に出てるってことで。よく整理して考えてみよう。
でも、、、バイト疲れで頭がよく働かない。
不幸中の幸いは、とっておきの焼酎を飲んでいないってことだ。
これで、夕子と乾杯するはずだったのに…
今となっては焼酎の瓶を見るだけでもその事を思い出すので、また元にあった戸棚にしまうことにした。
(夕子が見つかったら、あいつと乾杯だ。それまでは封印…)
夕子がいつも出かけるスーパーは、確か夜遅くまで開いてるんだった。
11時? お!まだ開いてる時間だ。時計を見る。10時ちょうど。
よし、これから行ってちょっと聞き込み調査だ。
シャワー浴びたので、本当だったらダラダラしていたい時間だけど。
スーパーはまだ明かりが煌々と灯っていた。近所にコンビニがないため、若いカップルや、不良っぽい少年少女や、仕事帰りの紳士、淑女(淑女とは、品性のある立派な婦人のこと)で夜というのに割と賑わっていた。
「夕子…… 何処かにいないかなぁ……」
野菜とか調味料とか、彼女があれこれ悩んでいそうなところをひと通り眺めてみる。
(ああ、迎えに来てくれたんだ☆ 美和ってやっさしーね)
ニコニコ笑顔の夕子を期待して、角を曲がるけど、何処にもそのクシャクシャっとした”エガオ”はいない。
永久に…?
背筋を冷たいものが走る。さっき、シャワーしたばっかりなので身体が強ばって冷えてきたんだろうか…。
早く夕子を見つけて、一刻も早く家に帰ろう…さぶ…。
お店をひと回り、念のためふた回りしてみたけれども、やっぱり彼女はいなかった。
半ば諦めて、レジの方へと向かう。
顔見知りの、レジの子に、夕子のことを聞くために…。
「夕子ちゃん? あ、う~~~ん、今日はどうだったかなぁ、あの子さ
さささっときて、品物だけ見て帰っちゃう時もあるからね」
「って、声もかけずに?」
「うんうん、友達なんだから、挨拶くらいしていっても良さそうなのに。別にコンビニみたいに飴とか買わなくてもいいのに、ね」
「あはは! 夕子らしいじゃん。…あ、じゃあ今日は見かけてない?」
「うう~~ん、ちらっと似た人を見かけたんだけど…そだったかどうかは判らないや、ごめんね」
「おーい、○○クン店長が呼んでるよー」
「あ、ごめんね、もうすぐ店仕舞いだから、外回りを手伝ってこないと。今日、ちょっと休みの子がいるから忙しいんだ」
「忙しいのにありがとうね…あ!夕子、見かけたら連絡して」
「はいよー、またのご来店お待ちしています~(^^)」
結局、夕子らしい足取りはつかめなかった、けど…。
夕子、今どこにいるの?
アタシハイマデモココニイルヨ…。
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帰ってきたピンクドラゴン(その3) 夕子がいなくなってから、丸1日が過ぎようとしている。今日もバイトけっこうきつかったな。また汗だくだくになっちゃった。 あ、夕子、いないんだから夕飯を
2006/09/07(木) 11:09:02 | じゃあ、またね
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